入国管理局による収容とは何か

 「入管」「収容」と聞いても、??な方も多いでしょう。
 「刑務所」とは違うの?逮捕されている人?と思う方もいらっしゃるでしょう。
 全然違います。

 刑事事件の場合は、犯罪発生→逮捕→勾留→起訴→裁判→無罪or有罪→懲役刑なら刑務所へ、という流れになります。
 この間、拘置所などでずっと身体拘束されたままの人もいますし、そうでない人もいます。
 「→」の部分で、被疑者・被告人が要求しなくても、裁判所(裁判官)がその身体拘束は正しいのか?間違っているのではないか?と審査します。
 間違っていると判断されれば身体拘束はされなくなります。

 また、被疑者・被告人は、この一連の流れの中で、裁判所(裁判官)の判断に対して、逮捕または勾留段階の判断はおかしいから考え直してくださいと要求することができるなど、身体拘束中止のためのいろいろな要求を権利としてすることができます。
 さらにいえば、特に「逮捕→勾留→起訴」間には厳格な時間制限が設けられています。
 身体拘束という最大の人権侵害期間をできるだけ短くする趣旨です。

 これに対し、入管は、退去強制事由(在留期限を超えた在留など)に該当する疑いさえあれば、逃亡の危険等の収容の必要性がない場合であっても、人身の自由を奪う収容が可能であるという「全件収容主義」という考えを一貫してとってきました。
 まずは、最大60日収容(身体拘束)することができます。
 この「収容」は、入管法上、裁判所(裁判官)による司法審査不要で、入管の判断だけですることができます。

 また、入管は、入管の判断だけで出すことができる退去強制令書(裁判所(裁判官)による司法審不要)を出せば、無期限収容することができるという考えをとっています。

 このように刑事事件の手続保障と入管手続の手続保障の間には雲泥の差があります。
 裁判所(裁判官)の判断も一切入りませんし、権利として身体拘束解放を要求することができません。
 身体拘束期間の時間制限も刑事手続に比べれば、無きに等しいものです。

 そもそも、入管法違反(オーバーステイなど)は、刑法犯(殺人、強盗など)と同列に考えられるべきではありません。
 入管法違反と刑法犯では行為に対してとるべき責任の重さが全然違います。
 また、入管法違反で収容中(身体拘束中)の方々にはさまざま個別具体的な事情があります。
 難民申請中の人もいます。
 日本人の配偶者や子どもなどの家族をもった人もいます。
 何十年も日本で居住してきたため日本以外の場所に生活基盤のない人もいます。
 経済が非正規滞在者を必要としている面もあります。

 このように入管は、行政裁量によって身体拘束できてしまうわけです。
 しっかりと監視しなければ、さまざまな事故が起こります(現実に過去何度も生命身体にかかわる事故が起こっています。)。
 私が過去に担当した事件を転載しておきます。

【転載】大阪入管に収容中の男性が医師の診療を拒否され、適切な医療措置を求めて提訴
https://www.ak-law.org/news/1692/
2016年6月29日、大阪入国管理局長の診療拒否に対する国家賠償請求(慰謝料請求)と、適切な医療措置の義務付けを求めて、被収容者が、大阪地裁に提訴しました。
 入管収容男性 治療拒否と提訴 06月29日 17時41分
 http://www.nhk.or.jp/kansai-news/20160629/3587031.html
 NHKの報道にもあるように、おととし、東京入国管理局(品川)と東日本入国管理センター(茨城県)で外国人3人が収容中に相次いで死亡していて、日本弁護士連合会が適切な医療を求める声明を出しているほか、支援団体も改善を求めています。
 全国の入管での医療や生活環境に問題がありますが、昨今の大阪入管での医療や被収容者の生活環境の悪さは特に問題視されていました。
 本年2月、大阪入管では医療や生活環境の悪さなどに端を発して、ハンガーストライキが起こるほどでした。
 ハンストの様子や、医療や生活環境の悪さの詳細は、一番下のURLをご覧ください。
 失われた人の命は二度と戻ることはありません。
 被収容者の命を守るための訴訟です。今後もこの訴訟に注目してください。
 本訴訟の弁護団は、清水亮宏弁護士と私・中井雅人です。

「大阪入管に収容された44人がハンスト――「死んでからだと遅いです」と訴え」
 http://praj-praj.blogspot.jp/2016/02/40.html
 「大阪入管に支援5団体が申入書「死亡者がいつ出ても不思議ではない危機的な状況」」
 http://praj-praj.blogspot.jp/2015/02/blog-post.html

弁護士 中井雅人