労働時間の適正把握~厚労省発表の「過労死等ゼロ」緊急対策について~

労働時間が適正に把握・管理されることは極めて重要です。

労働時間は、いわゆる未払い残業代請求をに代表される未払い賃金請求の基礎となりますし、
労災認定の際にも決定的な要素になります。
そもそも、働きすぎは生命健康を害する危険があります。
そのため、労働時間はいったい何時間何分なのかを、労働者使用者双方が適正に把握・管理し、
労働者が生命健康を害するような労働災害(労災)が発生しないように注意しなければならないのです。

昨年、12月末に厚労省が「『過労死等ゼロ』緊急対策の取りまとめについて」を発表しました。
昨年の電通事件等を受けてのことだと思います。
どこまで実効性のある対策が実際に実施されるかは別として、内容は前進していると思います。

裁判との関係では、

① 労働者の「実労働時間」と「自己申告した労働時間」に乖離がある場合、
使用者は実態調査を行うこと
② 「使用者の明示または黙示の指示により自己啓発等の学習や研修受講をしていた時間」は労働時間として取り扱わなければならないこと
等を明確化する。(H29年より実施)

という記載が注目されます。
特に②です。

今までも、

「使用者が実施する教育、研修、訓練については出席しなければ不利益が科せられるというような場合には実労働時間である。まったく強制の契機がなく、自由参加であれば労働時間にはあたらない。」(平成11年3月31日基発168号)

という通達がありました。

前記②と比べて消極的な表現になっていますが、「明示または黙示の指示」と言っていることはほとんど同じだと思います。
また、今までの裁判例でも、内容としては「明示または黙示の指示」を認定し、
自己啓発等の学習や研修受講などが労働時間として認められることもありました(主張立証は簡単ではありまんが。)。
そのため、裁判実務上、目新しいことはないのかもしれませんが、
改めて「使用者の明示または黙示の指示により自己啓発等の学習や研修受講をしていた時間」は、
労働時間」だということを示したことで、
社会的機運が高まり、労働時間が適正化されることに繋がってほしいです。
また、裁判例にも良い影響を与えてほしいです。

弁護士 中井雅人

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