試用期間満了後の本採用拒否への対処

使用者は労働者を採用した後に、3か月から6か月の試用期間をおき、従業員としての適格性を観察することが多いです。
この試用期間終了時に、使用者は労働者を本採用するかどうかを決定します。
労働者は、この決定で本採用を拒否されたとしても、法的に争える可能性があります。

1 「試用期間」の法的性格
  試用期間とは、期間の定めのない労働契約後に、使用者が労働者の従業員としての適格性を観察する期間です。
  重要なことは、期間の定めのない労働契約が成立しているということです。
  もっとも、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されている。
  そのため、試用期間は、法的には留保解約権付労働契約だといわれています。
  試用期間中の解雇または本採用拒否は、留保解約権の行使すなわち解雇にあたります。

2 「試用期間」に該当するかどうかの基準

「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である」(最高裁判決H2.6.5 神戸弘陵事件)。

  「試用期間」かどうかは、契約の文言や形式にとらわれず、具体的な事実関係に即して判断されるということです。

3 「試用期間」と認められれば「解雇」の場合と同様の基準で検討

「いったん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇傭関係に入った者は、本採用、すなわち当該企業との雇傭関係の継続についての期待の下に、他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることに思いを致すときは、前記留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。」
「換言すれば、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。」
(最高裁判決1973(S48).12.12 三菱樹脂事件)

 具体的には経歴詐称、試用期間中の勤務成績不良、業務遂行能力の不足、勤務態度不良等改善の機会の付与があったか、改善の見込みはあったかなどが考慮事情となります。
 
 中途採用の場合は能力不足は厳しい判断となりますが、新卒の場合は能力不足だけでは足りず、能力向上の見込み、他の職種への転換の可能性、指導の程度等も考慮されます。
 もっとも、他の証券会社から転職した営業社員に6か月の試用期間が設定されその途中で解雇された事案で、
 約3か月半の営業実績をもって従業員としてのて適格性を有しないと認めることはできず、解雇無効と判断された
 事例もあります(東京高裁H21.9.15 ニュース証券事件)。

4 試用期間満了後の本採用拒否への対処
 ⑴ 交渉(弁護士・労働組合)
   本採用予定日からの就労要求・賃金請求
 ⑵ 裁判 
  ア 本採用労働者たる地位確認請求 仮処分・労働審判・通常裁判
  イ 損害賠償請求(賃金相当額・慰謝料等)
  
 弁護士 中井雅人