採用内定取消への対処

就職活動(就活)が大変な負担を強いているのは今や社会問題になっています。
その大変な就活の結果、見事内定を獲得した学生にとっては、他の企業への就職活動ができない現実があったり、内定先への就職を期待し他の企業への就活をやめたりするでしょう。
そのような学生にとって内定取消しは、新卒での就職の可能性が事実上絶たれることになります。
これは死活問題です。
この記事では、採用内定取消への対処例をご紹介します。

1 労働契約の成立

「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」(労働契約法6条)

 =労働契約が成立するためには、
  ①労働者が使用者にしようされて労働すること
  ②賃金支払い
 の合意が必要だということです。
 ※労働の具体的内容や種類、労働時間の賃金の詳細までは特定される必要はない(労基法15条参照)。

2 内定の法的性格
採用内定の法的性格は事案により異なりますが、採用内定通知のほかには労働契約締結のため特段の意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。
そのため、採用内定取消すなわち解約権の行使は、解雇であり、解雇権濫用を禁止する労働契約法16条が適用されます。
「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利を濫用したものとして解雇(採用内定取消)は無効となります。

3 「解雇」の場合と同様の基準で検討
採用内定取消(一方的解約=解雇)が有効とされるのは、

①採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であり、
②この事実を理由として採用内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合

に限られます。(最高裁S54.7.20 大日本印刷事件)

4 具体例
具体的に考えられる内定の取消事由としては、
ⅰ契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき(成績不良による卒業遅延)
ⅱ健康状態の著しい悪化
ⅲ重要な経歴詐称
ⅳ重要な必要書類を提出しないこと
ⅴその他の不適格事由(逮捕・起訴など)
などが考えられます。

ⅵ経営状況の悪化による採用内定取消も考えられます。
この場合については、基本的に整理解雇の場合に準じ、いわゆる整理解雇の4要件(要素)=①人員整理の必要性、②解雇回避の努力義務、③解雇対象者の選定の合理性、④手続の妥当性、を踏まえて、その有効性が判断されることになります。

たとえば、2014年、某テレビ局で女性アナウンサーとして内定が出ていた大学生が、過去に銀座でホステスをしていたことを理由に内定が取り消されたという事件がありました。
当時かなり報道されたと思います。
同事件は東京地裁に提訴され、2015年に和解が成立し、大学生は内定取消を受けた某テレビ局に入社し、アナウンサーとして活躍しているそうです。
当初、某テレビ局は「高度の清廉性を求められるアナウンサーにふさわしくない」と主張していたようです。
しかし、これの内定取消理由はおかしいですよね。
上記ⅰ~ⅵにあてはまりません。
それだけでなく、今の社会でアナウンサーは「高度の清廉性を求められる」職業でしょうか?
そもそも銀座でホステスをしていたことによって「清廉性」が低下するのでしょうか?
少なくとも今の社会では、答えは「NO」でしょう。

5 内定取消しへの対処
 ⑴ 交渉(弁護士・労働組合)
   入社予定日からの就労要求・賃金請求
 ⑵ 裁判 
  ア 従業員たる地位確認請求 仮処分・労働審判・通常裁判
  イ 損害賠償請求(賃金相当額・慰謝料等)

弁護士 中井雅人