【弁護団声明】大阪入管14時間後ろ手錠懲罰事件勝訴判決

弁護団声明

2025年4月16日、大阪入管14時間後ろ手錠懲罰事件の判決がありました。

判決を受けて、弁護団声明を公表します。

弁護団は大森景一・川﨑真陽・高山良子・中井雅人・西川満喜です。

20250417弁護団声明(公開版) 大阪入管14時間後ろ手錠懲罰事件

弁護団声明

　２０２５年４月１６日、大阪地方裁判所第１７民事部（堀部亮一裁判長）は、ブルゴスフジイさん（以下「原告」）が、２０１７年１２月２０日から２１日にかけて、大阪入国管理局内の保護室等において、長時間後ろ手錠を施されたことなどについて国家賠償請求を求めていた裁判で、国に対し１１万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
本判決は、入管職員による本件手錠の使用が、「自傷他害や器物損壊のおそれがあったとまでいえない状況で継続された過剰な戒具使用であったと認めるのが相当である」としており、その違法性を認めたこと自体は評価できる。
また、本判決は、「そもそもフジイが警備官らの指示に従う旨の意思表示をしないことや、訪室した警備官らに反抗的な態度を示すことは、それ（ママ）事情のみでは本件手錠２の使用を正当化させる事情に当たるとまでいえない」とし、法廷で証言した当時の入管職員の不合理な主張を排斥した。実際の入管収容現場においては、このような法に基づかない運用がまかり通っている実情があることから、本判決が入管運用の誤りを正した意義は大きく、入管収容現場での権利回復の闘いに活用されることが期待される。
しかし、本判決は、保護室内での後ろ手錠の使用及び午前５時４５分以前の長時間に及ぶ後ろ手錠継続の違法性を認定しなかった。本判決は、保護室の入室前後を問わず、「戒具を使用しなければ制止が困難で、かつ、両手を前に動かすことが可能な前手錠では十分な制止ができない」かどうかを検討するのみで、保護室入室後の手錠使用や後ろ手錠の使用の異常性を検討しなかった。これは、判決に被収容者の人権保護の視点が欠けているからである。このことは、本判決が、弁護団が入管の行為の違法性の根拠として一貫して主張してきた憲法違反・国際人権法違反について、一文字も言及していないことからも見て取れる。本判決は、憲法・国際人権法といった人権に関する法規範に基づいて判断するのではなく、入管の実務運用に及ぼす影響を最小限度に留めることに腐心しているかの如き判決であり、司法の役割を放棄している。
さらに、本判決は、例えば、なぜ「両手を前に動かすことが可能な前手錠では十分な制止」ができないのかについて事実認定がなされていないなど、事実認定の面においても不十分な点がみられる。
弁護団は、原告が遺した「にゅうかんのたんとうさんは、がいこくじんに、ぼうりょくをしないでください。ぎゃくたいをしないでください。がいこくじんに、どうぶつみたいな、あつかいを、しないでください。」という思いを実現するべく、控訴し、一審判決の誤りを是正させられるよう全力を尽くす所存である。

２０２５年４月１６日
ブルゴスフジイ弁護団