大阪入管で手錠され14時間放置など国家賠償請求~証拠保全における国の対応の問題・提訴報道~

2020年2月20日、大阪地裁に提訴しました。
弁護団は、証拠保全手続により、大阪入管が保有する本件暴行等が記録された保護室内の監視カメラの映像等を確認しました。これら映像を確認すれば、「保護」ではなく、実質は「懲罰」であることがよくわかります。裁判所の粘り強い説得にも関わらず、国は大阪入管が保管している映像の裁判所への提供を拒否しました(国は動画を画像化して裁判所に提出することに固執しました。)。

証拠保全における相手方国の対応の問題

1 映像提供を拒否・裁判所による映像撮影を拒否した相手方国

本件証拠保全手続は、数次にわたる続行期日が開催されました。相手方国が、監視カメラ等の映像の提供ないし裁判所による撮影を拒否したからです。続行期日のたびに裁判官・書記官、相手方国の担当者(訟務検事・法務局担当者・入管担当者など)が、相手方国が証拠を提供を拒否する代わりに作成する監視カメラ等の映像のスクリーンショット作成等に何時間も費やしたのです。本件事件に関する映像は、「保護室」内で後ろ手に手錠をかけられている箇所だけでも14時間以上であり、その前後の関連する箇所を含めると24時間近くあります。この長時間の映像からスクリーンショットを作成するのです。司法資源(関係者の人件費や時間)の無駄遣いだと言わざるを得ません。
相手方国は、映像の提供や撮影に応じない理由について、結局のところ、映像の提供や撮影に応じる義務がないとしか述べません。当然に相手方も理解した上での発言だと思いますが、2019年6月21日決定別紙検証物目録記載の証拠については提示する義務があります。そして、相手方国が映像を提示して上映した以上、裁判所がビデオカメラ撮影という検証方法を選択して検証したとしても、相手方国にはそれを拒否する権限はないはずです。
そもそも、仮に裁判所によるビデオカメラ撮影に応じる「義務」がないとしても、検証物目録記載の証拠について提供ないしビデオカメラの撮影に応じる相手方国の「権限」はあるはずです(相手方国は提供ないし撮影を許容するという権限を行使しても違法ではないはずです。)。撮影に応じることは、改竄・破棄・隠匿を防止するという法の趣旨からすると、極めて正当な権限の行使です(国家としてあるべき姿です。)。
また、税金を使って作成している監視カメラの映像等なのですから、そうした映像等はいわば公共の財産です。一企業が監視カメラの映像等の提供を拒否するのとは違います。そうした観点からも「提供」して当然だと言えます。

2 裁判所が検証調書に検証結果を記録することができない

検証とは、五官の作用によって、直接に検証対象物の形状・性質・状態を観察し、その結果として得られた内容を証拠資料とするものですが、DVD等に記録された映像等が検証対象部である場合、その物自体を検証調書に添付できなければ、検証によって得られた成果を記録することができず、証拠保全の目的を達成することができなくなります。つまり、本件相手方国の対応は、実質的に見ると検証拒否です。
相手方国は、静止画の提供に拘泥しました。申立人代理人としては、後日、相手方が動画にマスキングを施したものと差し替えてもよいと申し出ていたにもかかわらず、静止画の提供に拘泥しました。このように相手方が合理的根拠もなく静止画の提供に拘泥したことから、改ざん等の疑いが生じざるを得ません。
そもそも、静止画によって得られる情報は、動画とは質的に異なります。静止画によって動画と同等の視覚情報を得ようとすれば、正確な計算はしていませんが、何千万枚何億万枚の静止画が必要になります。仮にそのような静止画の提供となるのであれば、検証調書の謄写費用は莫大な額になり、到底申立人には賄えなくなります。相手方による事実上の証拠保全妨害と言わざるを得ません。
また、静止画には、音声情報が欠落しています。つまり、動画中の音声情報に関しては、相手方が提供しなかったことにより検証不能になったということです。

3 相手方国が映像提供等を拒否する真の理由=隠したい

相手方国は、2019年7月16日の検証期日において、映像の提供を拒否する理由に「保安上の理由」も挙げていました。しかし、この「保安上の理由」には全く中身がありません。担当裁判官も「保安上の理由」に中身がない旨指摘していましたが、相手方国はその指摘に回答することができませんでした。
なお、申立人代理人中井雅人が弁護人を担当した別件の刑事裁判(2018年1月に発生したとされる大阪入管収容場の居室および保護室における公務執行妨害被告事件)において、担当検察官は、前記居室内および保護室内で撮影されたハンディカメラの映像および防犯カメラの映像を、検察官請求証拠として証拠請求しました。これらの証拠請求された映像は、「職員の容貌」、「保護室の区画、配置、構造等に関する情報」等を含めてすべてマスキングされない状態で音声も含めて公開の法廷で上映されました。同公開の法廷では、入管に収容されている外国人を支援する市民等が相当数傍聴しており、同人らが前記マスキングをされていない動画を見ていました。しかし、申立人代理人が知るところによれば、その後、「職員の容貌」、「保護室の区画、配置、構造等に関する情報」等にマスキングがかけられなかったことが原因となった保安上の支障は生じていません。
すなわち、相手方国が映像を提供したくない表向きの理由は、その場しのぎの口実だということです。
では、相手方国が映像を提供したくない真の理由は何でしょうか。それは、映像が「申立人らの手に渡ると困るから」でしょう。裁判で使われると困るから、メディアによって日本中に世界中に発信されると困るから、と考えるのが自然でしょう。公共の財産がこのように扱われてよいのでしょうか。

報道

NHK関西 NEWS WEB

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200220/2000025540.html?fbclid=IwAR17FYoAt0YlVdtx4Oq9bZh5TycXiFRulY8PZV6hBy2tsk8Pveq7UewadH0
“入管で暴行骨折”ペルー人提訴
02月20日 12時05分

大阪出入国在留管理局に収容されているペルー人の男性が後ろ手に手錠をかけられ、14時間以上、放置されて腕を骨折したとして、国に賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは、不法滞在で大阪出入国在留管理局に収容されているペルー人の40代の男性です。訴状などによりますと、男性は3年前、管理局での食事が毎日同じだとして改善を訴えたところ、複数の職員に取り押さえられて保護室とよばれる1人部屋に連れて行かれ、後ろ手に手錠をかけられたということです。男性は14時間半にわたり部屋に放置されたうえ腕をねじあげられるなどの暴行を受け、左腕の骨にひびが入るけがをしたとしています。
男性の弁護団が公開した、管理局の監視カメラの映像には、複数の職員が男性を担ぎ上げる様子や、うつ伏せの状態で押さえつける様子が写っています。男性は精神的にも肉体的にも苦痛を受けたと主張し、国に対して200万円余りの賠償を求めています。
男性の代理人の川崎真陽弁護士は、「カメラの映像では職員が『従うか』と聞いていて、管理局の屈服させたいという姿勢と外国人への差別を感じる。行き過ぎた行為だ」と話しています。
一方、大阪出入国在留管理局は、「現段階で訴状を見ていないのでコメントできない」としています。

MBS

https://www.mbs.jp/news/kansainews/20200220/GE00031681.shtml?fbclid=IwAR299ZCwTbqQVu95vmMBNx-osh-WuChs682jng2FgjDaAMZfcXpF-UrtVys
「手錠され14時間放置は人権侵害」大阪入管収容のペルー人男性が提訴…骨折も
更新:2020/02/20 12:12

大阪入国管理局に収容されているペルー人男性が、後ろ手に手錠をかけられるなどの暴行を受け、長時間にわたり放置されたことは人権侵害にあたるとして国に対し損害賠償を求める訴えを起こしました。
2月20日、訴えを起こしたのは、不法残留のため大阪入国管理局に収容されている40代のペルー人男性です。
訴状によりますと、男性は3年前、施設で出される食事を巡り職員とトラブルになり、職員から頭や手を押さえつけられるなどの暴行を受け、左腕を骨折するけがをしたということです。男性はその後、後ろ手に手錠をかけられ、14時間にわたり別室に放置されたと訴えていて、「精神的、肉体的苦痛を受けた」として国を相手取り慰謝料約200万円の支払いなどを求めています。
「本当に必要な行為だったのかというと、私たちとしては不要な行為で、行き過ぎた行為だったと考えています。」(原告代理人 川崎真陽弁護士)
大阪入国管理局は「現段階で訴状を見ていないのでコメントできない」としています。

関西テレビ

https://www.fnn.jp/posts/2020022019453607KTV
手錠のまま『14時間以上も放置された』入管職員の暴行で骨折 国家賠償を求めて提訴
2020年2月20日 木曜 午後7:45

大阪入国管理局で収容されているペルー国籍の男性が手錠をされて14時間以上放置された上、暴行を受けたとして損害賠償を求める訴えを起こしました。
保護室に手錠をされて放置されたペルー人の男性。14時間以上この状態は続いたといいます。
訴えによると不法滞在などの理由で大阪入国管理局に収容されているペルー国籍の男性(40代)は3年前、食事に不満を訴えたところ、床に押し付けられ、手錠をされました。
その後、男性は手錠をされたまま14時間以上放置された上、腕をねじられるなどの暴行を受け左腕を骨折したと主張しています。
男性は「必要最小限の制圧行為の範囲を超えていて違法」などとして国と職員らに対し、約220万円の損害賠償を求めています。
【原告側弁護団・川崎真陽弁護士】
「抵抗もしていないのに、後ろ手錠をはずさない状態を継続させたところに懲罰的な意味合いがあったのではないか」
大阪入国管理局は「訴状をみていないのでコメントできない」としています。

テレビ大阪

https://www.tv-osaka.co.jp/yasashii/news/?p=11986
入管職員から暴行で賠償提訴
2020年2月20日(木) 18:10

大阪入国管理局の職員に暴行されたとして日系ペルー人の男性が訴えを起こしました。
訴状によりますと、男性が食事の不満などを訴えたところ複数の職員に押さえつけられ、14時間以上手錠をかけられ放置されたということです。
男性は左腕の骨にひびが入ったとし、国に対し慰謝料180万円などの支払いを求めています。

朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/articles/ASN2N3WFXN2NPTIL004.html?fbclid=IwAR2MFf3n1pQBd609DP9ul9tULj0uh8e9woa1hBsjMmIBcD46fzJ-uqamo90
「手錠され14時間放置」 入管収容のペルー人男性提訴
2020年2月20日 12時25分

大阪出入国在留管理局(大阪市住之江区)で収容中の日系ペルー人の40代男性が、職員に体を押さえつけられて腕の骨にひびが入るけがをしたり、後ろ手に手錠をかけられたまま14時間以上放置されたりしたとして、国に216万円の損害賠償を求める訴訟を20日、大阪地裁に起こした。
訴状によると、2017年8月に収容された男性は同12月、「揚げ物やきんぴらの繰り返しだ」などと食事への不満を訴えて昼食を拒否した際、複数の入管職員に体を押さえつけられて後ろ手に手錠をされ、保護室に連行された。いったん手錠は解かれたが同日夜に再びかけられ、体を押さえつけられるなどしたほか、翌日昼まで手錠を解かれなかったとしている。
男性側は、男性に抵抗する意思はなく、職員たちが押さえつけるなどした行為は必要最小限の範囲を超えており違法だと主張。手錠をしたまま長時間放置され、著しい苦痛を受けたとして、慰謝料などの支払いを求めている。

男性側代理人の川崎真陽(まや)弁護士は「屈辱的で拷問に匹敵する行為。大阪入管の責任を問いたい」。大阪入管は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。(遠藤隆史)

大阪入管内で後ろ手錠で14時間放置 第1回口頭弁論期日