離婚事件における「合意に相当する審判」と「調停に代わる審判」

最近、担当離婚事件で偶然にも立て続けに「合意に相当する審判」と「調停に代わる審判」がありました(それぞれ別件です。)。

名前は似ていますが、全く異なる「審判」です。

どちらも珍しい「審判」のようです。

「審判」とは、裁判官の決定のことです(厳密には異なりますが、「判決」のようなものです。)。

「審判」に記載された事項を履行しない場合は強制執行の手続をとることができます。

裁判所のウェブページ 審判手続一般

合意に相当する審判(家事事件手続法277条)

公益性の強い事項(=個人だけが合意することで変動させられない事項)が対象です。

典型的には、婚姻・離婚・養子縁組・認知等(身分関係が変動する手続)の無効や取消です。

当事者間に紛争を終わらせる「合意」(法277条1項1号2号)があるが、

公益性の強い事項(=個人だけが合意することで変動させられない事項)なので、

当事者の合意だけでは紛争終了(例えば調停成立)とはできないのです。

そのため、当事者の「合意」+裁判所の関与(判断)が必要になります。

家事事件手続法

(合意に相当する審判の対象及び要件)
第二百七十七条 人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
一 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
二 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。
2 前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。
3 第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
4 第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。

調停に代わる審判(家事事件手続法284条)

公益性が強くない事項(=個人だけが合意することで変動させられる事項)が対象です。

例えば、調停手続において、夫婦間で離婚や親権者の合意が最終的に成立しない場合、調停不成立となり、調停手続が終了します(法272条本文)。

しかし、家庭裁判所は、相当と認めるときは、調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判をすることができます(法284条1項・2項)。

つまり、より正確には「調停における合意に代わる審判」です。

この審判は、2週間以内に異議の申立てがないとき、または、異議の申立てがあっても却下されたときは、確定した家事審判または確定判決と同一の効力を有します(法287条)。

これによって成立する離婚のことを審判離婚といい、審判離婚の成立件数は、全離婚件数の0.1%を下回りますが、近時では漸増傾向にあるようです(本山敦 青竹美佳 羽生香織 水野貴浩『家族法[第3版]』日本評論社,2021年,p.53)。

家事事件手続法

(調停に代わる審判の対象及び要件)
第二百八十四条 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。
2 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
3 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

紛争の迅速かつ円滑な解決のために

弁護士が関わる事件は、解決までに時間がかかってしまうものが少なくありません。

しかし、当職が偶然にも立て続けに得た「合意に相当する審判」と「調停に代わる審判」のケースでは非常に迅速かつ円滑な解決が図られたといえます。

「合意に相当する審判」のケースでは、相手方代理人の尽力も大きく、早期の「合意に相当する審判」に至ることができました。

「調停に代わる審判」のケースでは、家事調停委員さんが本当によく当職や依頼人の主張を聴いてくださり(もちろん相手方にも公平に接されていると思います。)、裁判官も当事者双方の状況をよく思いめぐらせ、衡平に考慮し、迅速に「合意に相当する審判」に至ることができました。

 

弁護士中井雅人