あなたの請負契約は本当に請負ですか 労働ではありませんか

 近時、労働者保護法制の規制を免れるために、実態は労働者なのに、労働契約ではなく請負(委託)契約とする事例が多々あります。
 「偽装請負」というと、一般的には、実態は労働者派遣なのに請負(委託)契約とするものをいますが、上記のものも実態に反する契約をしているので「偽装請負」といえます。
 労働者の権利を行使することがいかに大切かをご紹介します。

1 労働者性が認められなければ何が不利?
労働契約でなければ、「労働者」ではないということはありません。
(契約の形式が請負契約でも法的に「労働者」だと認められる場合もあります。)
しかし、偽装請負を行っている会社では、本来「労働者」であるはずの人を「労働者」として扱っていないようです。

日本の法律の中には「労働者」という言葉が登場する法律がいくつかあります。
一番有名なのは労働基準法でしょう。
他にも、最低賃金法、育児介護休業法、労働者災害補償保険法、労働組合法などがあります。
「労働者」ではないということは、これらの法律の適用がされないということです。
これは大変なことです。
たとえば、労働基準法は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」(同法32条)としています。
これがなければ、使用者は労働者を働かせ放題しても違法とはなりません。
それに、いわゆる残業代請求というのは、この労基法32条受けた労基法37条が定めています。
労基法の適用がなければ、残業代請求もできないということです。
また、労働基準法だけでも他にもたくさんの重要な労働者の権利、使用者の義務が規定されています。
年次有給休暇や賃金全額払の原則や休業手当などたくさんあります。)
さらに、挙げだせばキリがないほどですが、たとえば労働者災害補償保険法の適用がないことは見逃すことができません。
いわゆる労災です。仕事が原因で怪我をしたり病気になったりして、仕事ができなくなっても、
労災の各種給付が受けられないということです。これは大問題ですよね。

2 労働者性を判断する基準
先ほど、「労働契約でなければ、「労働者」ではないということはありません。」
(契約の形式が請負契約でも法的に「労働者」だと認められる場合もあります。)と述べましたが、
では、どのような場合に「労働者」と認められるのでしょうか。
たとえば、労基法では、
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」(同法9条)
と定義されています。
この定義の解釈について、1985(昭和60)年に旧労働省に設置された労働基準法研究会がまとめた報告書があります。
この報告書の内容が今でもほとんどそのまま裁判実務で採用されています。
以下、項目のみご紹介します。

A 「使用従属性」に関する判断基準
 ⑴ 「指揮監督下の労働」か
  ア 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
  イ 業務務遂行上の指揮監督の程度
  ウ 時間的・場所的拘束性の程度
  エ 代替性の有無(補強要素)
 ⑵ 報酬が労務の提供対価か
B 「労働者性」の判断を補強する要素
 ⑴ 事業者性の有無
  ア 機械、器具の負担関係
  イ 報酬の額
  ウ その他 業務遂行上の損害に対する責任負担、独自の商号使用など
 ⑵ 専属性の程度
   当該報酬により生活を支えているという意味での経済的従属性/組織的従属性
 ⑶ その他
   選考過程 公租公課の負担 労災保険の適用対象 服務規律の適用 退職金制度・福利厚生の適用など

3 私が担当した事件の共通点
私も、昨年だけでも2件、上記類型の「偽装請負」の労働事件を受任しました。
1件は、運送会社のドライバーの事案で、労働者側が主張する未払い賃金等の請求がすべて認める判決を得ました。
(横浜地裁2016年7月15日付判決)
もう1件は、内装会社の現場作業員の事案で、私が顧問を勤める労評を紹介し、
現場作業員らが職場内に労働組合(労評の分会)を結成(当該事業所の現場作業員の組織率は100%)しました。
私も連携して事件解決に向けて活動しています。
労働組合による追及の効果もあってか、会社側は実質的に労働者性を認めています。
事件解決に向けて団体交渉を継続しています。

この2件で共通することは、

①はじめは労働契約を締結したのに、途中から請負契約となった。
②請負契約となってからは労働者保護法(たとえば労働基準法)の権利が守られなくなった。
③複雑な法的判断以前に、常識的に考えて普通の会社員と同じではないかと思う事案。
(ひとつ目の例では労基法上違法とされる賃金からの違約金控除や損害賠償金の相殺などの問題がありました。)
(ふたつ目の例では労基法上の権利である残業代請求や年次有給休暇の行使が認められないなどの問題がありました。)

です。

4 「労働者」としての権利行使をしましょう
①~③の共通点は重要だと思います。
先に示しましたように判断基準に沿って「労働者」かどうかを法的に判断するのは、
それなりに専門知識技術のいる作業ですし、中には微妙な事案もあります。

自分は大丈夫か?請負(委託)契約とされてているか本当は労働者ではないか?
と思われた方は、①~③を参考にしてみてください。
おかしいなと思ったら、労働弁護士にご相談ください。
労働組合や裁判を通して、労働者性を認めさせ、残業代請求をはじめとした労働者の権利を実現させましょう。

問題解決に取り組まないということは、労働者としての権利行使ができない状況で働き続けるということです。
労働弁護士への相談は早ければ早いほど良いです。
労働者としての権利を行使しましょう。

弁護士 中井雅人