労働者の損害賠償責任における責任制限

労働者の労働義務違反によって損害を被った場合には、使用者は労働者に対し、債務不履行や不法行為を根拠に損害賠償を請求することができます。

しかし、
⑴労働者に損害賠償請求の前提となる「過失」がなければ、労働者は損害賠償義務を負うことはありません。

⑵軽「過失」があったとしても、一定確率で発生するミスの場合には損害賠償義務を負わない可能性が高いです。

⑶重過失があったとしても、
信義則上(民法1条2項)相当と認められる限度で賠償請求できるにすぎないとするのが判例です。
使用者は労働者の労働によって利益を得ているからです(報償責任)。
具体的には、
①労働者の帰責性
②労働者の地位・職務内容・労働条件
③損害発生に対する使用者の寄与度
を考慮して判断されます。

茨城石炭商事事件 最高裁1976(S51)年7月8日 民集第30巻7号689頁 参照)

弁護士 中井雅人