原告として提訴しました
2025年7月16日、当職が原告として、「入管人権研修文書不開示決定取消等請求事件」を大阪地方裁判所へ提訴しました。
代理人は、上林惠理子弁護士、岡本秀樹弁護士、手島滉介弁護士です。
本件は、事件名のとおり、入管内の人権研修について開示請求をしたが、黒塗りで開示されたことに対し、不開示決定の取り消しと開示の義務付けを求めた行政訴訟です。
なぜ入管人権研修文書の開示に至ったのか
入管人権研修文書の開示に至った動機として、当職が弁護団の一員として担当した大阪地裁平成30年(ワ)第4683号国家賠償請求事件の和解内容があります。
当該事件は、2017年7月12日、大阪入管に収容されていたトルコ国籍の男性が、大阪入管職員らから制圧と称する暴行を受け右肩骨折などの重傷を負い、適切な治療も受けられず後遺症を負ったとして国家賠償を求めたものです。2020年に和解が成立し、被告である国が、300万円の金銭的な支払を約束するのみならず、「被告(大阪出入国在留管理局長)は,本件の事案を重く受け止め,原告に対して謝罪」するとともに、「同局収容場に収容されている者の人権を尊重しつつ,より一層適正な処遇を行うよう努めることを確認し」ました。
その後、当該和解を受け、入管本庁からきちんとするようにとの通達も出ました。
そこで当職は、当該和解の内容がきちんと履行されているのか調査することを目的に、入管に対して人権研修の資料や実施状況等の情報公開請求をおこなうに至りました。しかし、入管庁は、大部分を不開示(黒塗り・いわゆるのり弁開示)としたため、提訴を提起しました。
「外国人の人権」、「難民、障がい者と人権」、「難民、障がい者と人権」、「日本と世界の人権課題‐少数者を中心に‐」、「メディアから見た入管行政」、「人身取引・DV被害を受けた女性への支援から見える課題について」他。いずれも内容は全て黒塗り。
開示請求の対象
1 平成30年から令和4年までの各年において、出入国在留管理庁、施設等機関及び地方支分部局が開催した人権研修の配布レジュメや資料等のすべて。(「人権一般・外国人の人権」等。)
2 上記1の研修会の企画発案に係る議事録・連絡文書、参加者数、参加者の所属・氏名、実施場所、実施回数、参加者の感想・意見等、人権研修実施にかかる情報の全て。
提訴記者会見・集会での発言
提訴当日、提訴記者会見・集会をおこないました。そこでの発言を以下いくつか抜粋します。
原告中井弁護士「「行政庁でどんな人権研修をしているかは内緒です」というのが今の日本の(人権)水準で、それはやはり司法にも社会にも訴えるべきだろうと思います」
原告代理人上林弁護士「官製ヘイトと呼んでいる要するに不法滞在者というのは悪なんだと、犯罪者なんだという打ち出しは前から入管がやってきた。それは(衆議院選に見られるような排外主義の台頭に)絶対影響していますね、今の社会の情勢に。」
仮放免者の会支援者「2025年の現在も、大阪入管では後ろ手錠を用いた制圧をされそうになったという事例がある。入管の人権意識は変わっていない。」
TRY支援者「人権研修は、2017年に発生した事件の当事者の「二度と同じことをおこさないで」という願いを叶える手段。(入管が認識している)外国人の人権を、国際基準に照らし合わせて妥当か・発展性があるのものなのかを検証する情報開示請求だった。しかし、事件をおこした入管自らが黒塗りにして開示したということに対する入管の責任の重さは非常に大きい。」
TRY支援者「以前、入管内での食事について情報開示請求をしたが、献立から写真迄すべてが黒塗りで開示された。」
支援者「人権研修の内容が不開示だったことは、入管が見せれないものを教えていることになる。それって恥ずかしくないのかなと思う。」「入管の中では暴力を振るってもいいとなっているのはおかしい。」
報道一覧
朝日新聞 「人権尊重」誓ったのに…研修内容を黒塗りにした入管 弁護士が提訴
毎日新聞 入管文書黒塗り「違法」 人権研修内容、開示求め国を提訴 トルコ人骨折被害の弁護士 /大阪
関西テレビ 和解調書に入管「収容者の人権尊重」対応確認で求めた「研修資料」大半が黒塗り 国に開示求め弁護士が提訴
tansa 入管の人権研修、日付とタイトル以外は「黒塗り」 弁護団が国を提訴 収容者暴行、反省のはずが加速する「官製ヘイト」
#NoHateTV Vol.329 – 2025参院選〜ヘイトと闘う候補 00:02:43~00:19:30
弁護士中井雅人