手続 | 労働審判手続申立 |
事件の種類 | 地位確認(本採用拒否) |
立場 | 労働者 |
事案の概要 | 正社員として採用・試用期間の延長ののち本採用拒否と解雇予告がされた。
Aさんは、大阪府内のB社で未経験で採用されましたが、3か月後に解雇予告を通知されました。解雇理由として勤務態度不良、業務遂行能力の不足、協調性の欠落など注意喚起を行ったが改善されなかったからと説明されましたが、その具体的内容についての説明はありませんでした。 B社では、現場への移動時間に対する時間外労働手当(残業代)が支払われていませんでした。 |
和解までの経緯
Aさんは、解雇予告を通知された直後にご相談に来られました。
受任後すぐにB社へ通知書を送付し、復職の可能性も含めて代理人間で和解に向けた交渉を行いましたが、和解内容について合意に至らなかったため、約3か月後に労働審判手続申立を行いました。
B社にはタイムカードがなかったため、労働審判では日報を提出させました。日報に記載されていた始業時刻・終業時刻が時間外労働の立証につながりました。
そして、労働審判手続申立から約2か月で、裁判所も交えた和解が成立しました。(合意退職・解決金(未払残業代の存在も考慮し、基本給の約4カ月分))
初めてのご相談から5か月での早期和解、かつ就業期間が3か月という短期間であったことを鑑みると、勝利的和解であると言えるでしょう。
証拠を残しておきましょう
Aさんは、B社から口頭で解雇予告をされたときに、言ったことを書面にして出すようにB社に求めました。
話合いや口頭でのやり取りは、どうしても言った言わないの水かけ論になるため、裁判手続きとなると立証も厳しくなります。
書面や録音などの形で会社とのやり取りを残すことが非常に有効ですので、ご相談の前から意識的に証拠を残すことをお勧めします。
また、会社の指示であれば、現場への移動時間も労働時間と認められる場合があります。
会社の指示であることがわかる証拠、実際の出社時刻、退社時刻を記録に残すことが重要です。
解雇理由がなかったこと
本件は、正確には本採用拒否でした。法的には、試用期間の法的性質は解約権留保付労働契約とされており、本採用拒否は「留保解約権の行使」と言われています。そのため、実際の就労状況等の観察して従業員の適格性を判定するという留保解約権の趣旨・目的に照らし、本採用後の解雇の場合よりも解雇の裁量が広いとされています。
「留保解約権の行使」とは、労働契約成立時から留保されていた解約権の行使ですから、
「解雇」と同様です。
そのため、通常の解雇と同様の規制が及びます(解雇権濫用法理=労働契約法16条)。
今回の場合、B社はAさんに対して十分な注意、指導をせずに、突然解雇予告を言い渡しました。
また、B社が渡してきた解雇予告通知には、解雇事由が特定されておらず、また、解雇理由証明書も交付されませんでした。
たとえ書類が出されていても、書類の形式だけ満たせば解雇が有効になるわけではありません。
客観的合理性を欠き、社会通念上相当と認められなければ、解雇権の濫用として解雇は無効となります(労働契約法16条)。
本件では、本採用後の解雇ではなく「本採用拒否」であったとしても、それを正当化する解雇事由が具体的に存在しなかったのです。
弁護士へのご相談は早めに
解雇予告を通知されて数日以内に相談に来られたことで、極めて速やかにに代理人を通じて解雇無効の意思表示をすることができました。
実際の解雇日を過ぎたり数か月と時間が経ってしまうと、どんどん解決が先延ばしになるだけではありません。あまりに長期間の場合は解雇に合意したとみなされる場合もあります。
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