【解決事例】医療・介護施設の未払い残業代請求を交渉で解決(解決金額330万円)

手続 交渉
事件の種類 残業代請求
立場 労働者
事案の概要 クリニックに併設された介護施設(デイケア・通所型リハビリ施設)の正規職員として勤務していたAさんは、事業所の鍵を開ける等の開業準備や、日中に処理できない事務作業等のために、就業規則上の始業時刻よりも90分前後早く出勤し続けてきました。終業時刻後も1時間前後の残業をし続けてきました。しかし、残業代が一切支払われていませんでした。その他にも、業務多忙で昼休みが取れなかったときの残業代が支払われていませんでした。

 

解決までの経緯

交渉過程で、上記のとおりのAさん残業実態を証明するタイムカードが使用者から開示されました。基本的には、そのタイムカードの時刻に基づき残業代を計算し、残業代請求をしました。

使用者側からタイムカードよりも実際の労働時間が短い、一定の時期以降は午前8時よりも前に出勤することを禁止する旨通知していた、Aさんが主張するほどの残業の必要性がない等の反論がありました。

これに対し、Aさんと当職は具体的に反論をしました。

その後、代理人間の交渉で労使双方譲り合い、約3年分の残業代について330万円の解決金で和解するに至りました。

(口外禁止条項なし)

 

本件の特徴

Aさんが在職中であったこと

一般的には退職後に残業代請求をされる方が多いと思いますが、

当事務所では在職中の残業代請求事案も少なくありません。

合同労組(ひとりでも入ることができる労働組合)と連携して残業代請求をしていました。

タイムカードがあったこと

あたりまえのことかもしれませんが、タイムカードが存在したことで始業時刻前と終業時刻後の残業を立証することができました。

タイムカード等がない労働者は、できるだけ客観的な方法で自身の労働時間を記録するようにしてください。

始業時刻前の残業代が認められたこと

判決ではありませんし、使用者が「始業時刻前の残業代」を認めると言ったわけでもありませんが、

解決金額からすれば、始業時刻前の残業代が発生していることが前提になっています。

始業時刻前の就労による残業であっても、残業代請求が認めれれる可能性があります。

もっとも、一般的に、始業時効前の就労は、就業時刻後の就労よりも、残業代請求のハードルが上がります。

始業時刻前の残業は、終業時刻後の残業よりも、その時間に業務をしなければならない必要性、使用者の明示またが黙示の業務指示が認められにくい傾向にあるからです。

しかし、本件では、鍵開けに始まり、具体的な業務が複数あるという点でその時間に業務をしなければならない必要性は明らかでした。

また、Aさんの7時からの就労開始は何年にもわたって常態化しており、その点で少なくとも使用者による黙示の業務指示があったといえます。

Aさんの決断と使用者側代理人による良識的な判断?

裁判で判決を得ていれば、裁判所で和解をしていれば、330万円よりも高額になっていた可能性はあったと思います。

他方、裁判官の判断次第では、認められる残業時間が減り、330万円よりも低額になっていた可能性も否定できません。

また、裁判で紛争が長期化すること自体の負担もあります。

当職は、Aさんとよく検討した結果、330万円は十分に評価できる額でした。

もちろん、Aさんとしてはお金だけの問題ではありません。

使用者が、今までの残業の対価として、その額を任意に支払うことを認めたことにも意味がありました。

今後の適切な残業代が支払われる可能性も高まります。

使用者側代理人も、上記のとおり主張するべきことは主張されましたが、

裁判になった場合の敗訴リスク、裁判で紛争が長期化することのリスク等を使用者に十分説明されたと思います。

 

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弁護士中井雅人

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