依頼者からの声
勤務していたバス会社から退職後に不当な金銭の支払いを求められました。
それを機に、労働基準監督所↛労働基準監督所↛労働局と相談に行きました。
労基署や労働局は、バス会社がおかしい、問題があるとは言いながら何も動いてはくれませんでした。
諦めきれず、グーグル検索で(大阪)(労働)(弁護士)で調べ、その中で実績や評価の高い暁法律事務所の中井弁護士を知りました。
藁をも掴む思いでたどり着いた場所でした。
こんなにも時間や労力がかかるとは思いませんでした。
相談を進めるうちに一つだけではない沢山の問題も浮き彫りになっていきました。
中井先生はパワハラについてもこちらの心的状態にも配慮をしながも粛々とデータを取り、
会社からの脅しのような対応があった際にも毅然と対処してくれました。
係争中(裁判係属中)に、バス会社の年間休日がいきなり9日増えたことも知り、
全社員あわせると年間10000日ほど休日が確保されたようです。
最終的には要求どおりの和解に落ち着きました。
資本の大きいところが個人を黙らせます。
会社は大きな法律事務所に依頼して複数の弁護士が裁判に出席していました。
正直個人の金銭面でどこまでできるかという不安もありました。
しかし弁護士は凄いです。数値化し泣き寝入りしない選択肢を私に与えてくれました。
もし争いに負けていたとしても、心の置き所を作ってくれていたでしょう。
中井弁護士は怖くないので気軽に相談してみてください。
弁護士からのコメント
裁判での請求
依頼者Aさんは、裁判で以下の①②③請求をしていました。
①未払い割増賃金(残業代)請求
◇1年単位の変形労働時間制が無効であることを前提に、労基法37条に基づき再計算した割増賃金の請求。
◇始業時刻前のアルコールチェック後から乗車開始までの労働時間にかかる割増賃金請求。
②パワーハラスメントに関する慰謝料請求
Aさんは、直属の上司である指導運転士から大勢の前で胸ぐらを掴まれたり、まくしたてるような叱責を受けたということがありました。こうしたパワハラ行為について、慰謝料の支払いを求めました。
③個人情報の無断提供行為に関する慰謝料請求
Aさんは、入社時に会社の求めに応じて自動車保険の契約書のコピーを提供しました。
(他の労働者にも同様に入社時に提出を求めていたようです。)
会社は、この自動車保険の契約書のコピーを関連会社に無断で提供していました。
Aさんを含む運転手が契約している自動車保険会社の一覧表を作成し、原告を含む運転手らに対し、関連会社が扱う自動車保険をに変更しないかと営業し続けていました。
こうした個人情報の無断提供行為について慰謝料の支払いを求めました。
裁判の展開
①未払い割増賃金(残業代)請求
◇1年単位の変形労働時間制について、
被告は縷々主張し、1年単位の変形労働時間制が有効であると争っていました。
この点について、裁判所は、1年単位の変形労働時間制が無効である旨の心証開示をしていました。
過去の記事「変形労働時間制」のとおり、変形労働時間性の要件は厳格ですから、無効ないし間違った運用をしている使用者は多いです。
このバス会社も、原告代理人からみれば、
勤務系統表は労使協定の内容になっていないこと、
勤務系統表では適用対象労働者の労働日及び労働時間の特定ができていないこと、
被告がいう勤務確認表による30日前の特定・周知では1年間の「労働日及び当該労働日ごとの労働時間」を定めたことにならないこと、
等から明らかに1年単位の変形労働時間制の要件をみたさず無効でした。
また、有効無効以前に、変形労働時間制を前提にした残業代計算ができていませんでした。
(そもそも、適切な労働時間管理がされていません。)
過去の記事「変形労働時間制」のとおり、「変形労働時間制を採用するメリットのある事業場は多くはない」が妥当する事案です。
◇始業時刻前のアルコールチェック後から乗車開始までの労働時間について、
被告は、「勤務開始時刻までにアルコールチェックを実施するよう指示しているものではなく」、「勤務開始時刻前にアルコールチェックを自主的に済ませておくだけであり」等と述べ、アルコールチェックに要する時間について労働時間性を否定してきました。また、被告は、アルコールチェック後の乗車前の点検等に要する時間も、シフト上の勤務開始時刻よりも前にする必要がないとして労働時間性を否定してきました。
この点について、裁判所は、シフト上の勤務開始時刻の少なくとも5分~10分前の時刻は労働時間性が認められる旨の心証を開示していました。
(点検等に要する時間、車庫から乗り場までに要する時間、車庫から始発乗り場までの移動時間等を考慮。)
②パワーハラスメントに関する慰謝料請求
被告は、直属の上司である指導運転士がAさんの襟を掴んだところを見たと述べた従業員が1名存在したことは認めましたが、その他のAさんの主張についてほとんど争ってきました。
③個人情報の無断提供行為に関する慰謝料請求
被告は、個人情報の提供自体は認めましたが、Aさんの同意があったため違法性はない旨主張しました。
裁判上の和解の成立
民事訴訟からいったん調停に付し、調停に代わる決定(いわゆる17条決定)を経て、裁判上の和解に至りました。
Q調停に代わる決定とはどのような手続ですか?
A調停では、お互いの意見が折り合わず、話合いの見込みがない場合には、手続を打ち切りますが、裁判所が適切と思われる解決案を示すこともあります。これを「調停に代わる決定」といいます。この決定は、お互いが納得すれば調停が成立したのと同じ効果がありますが、どちらかが2週間以内に異議を申し立てると、効力を失います。その場合には、訴訟を起こすことができます。
Aさんは、調停に代わる決定(いわゆる17条決定)に対し、その時点では納得ができず異議申立をしました。
それにもかかわらず、その後、裁判上の和解に至ったのは、
早期解決の観点等諸般の事情がありますが、
Aさんが裁判上の和解を選択することができたのは、調停に代わる決定書の「理由」に相応の記載があったからです。
(上記の労働時間性の認定や相応の解決金額の判断等。担当裁判官が事案を適切に見てくれたということです。)
また、Aさんは、一貫していわゆる口外禁止条項なしの和解を求め、会社側はこれに難色を示してきましたが、
最終的には、口外禁止条項なしの和解が成立しました。
まとめ
提訴前の交渉段階でも、会社は、裁判上の和解での解決金額とそう大きくは変わらない解決金の提示をしていました。
しかし、労使双方、口外禁止条項の点で交渉決裂となりました。
Aさんが、口外禁止条項なしにこだわった理由は主に2点です(代理人による要旨です。)。
ひとつは、Aさんは、自身は退職していますが、今もバス会社に勤務する元同僚がいるのであり、労働環境が少しでも良くなってほしいという思いがありました。
もうひとつは、お金を払うから口をつぐめというその姿勢やあり方そのものが公正・正義に反するという思いです。
(これは口外禁止条項を拒否したい労働者がよくおっしゃることです。)
上記でAさんもおっしゃっているように、裁判係属中にバス会社の労働条件が一部改善していきました(元同僚からの連絡。)。
もちろん、本件裁判との厳密な因果関係は不明ですが、我々の変形労働時間制が無効であるという主張や始業時刻前の労働時間性の主張と無関係ではないとみています。
費用対効果だけでみれば、Aさんが口外禁止条項を受け入れ、提訴前の交渉で和解をするのが得だったといえるでしょう。
(会社からみれば、会社が口外禁止条項なしを受け入れ、提訴前の交渉で和解するのが得だったといえます。)
しかし、民事訴訟を提起したからこそ、
調停に代わる決定(いわゆる17条決定)の「理由」を見ることができたのであり、
口外禁止条項なしの和解を勝ち取ることができたのです。
経済的な「損」「得」だけでは評価することができない正当な裁判闘争だったといえます。
弁護士中井雅人

