【解決事例】不当解雇に対する訴訟 勝利的和解(解決金額以外に口外禁止なし)によって解決

勝利和解までの経緯

Aさんは、損害保険会社のコールセンターで期間の定めのない労働契約で勤務していました(当初期間の定めのある労働契約でしたが無期転換しています。)。
部署内で起こっていたハラスメントについて会社の相談窓口に相談して以降、担当業務の変更等の措置が始まりました。
会社から能力不足による再指導と称して筆記・実技試験を受けさせられたり、業務に関係のない本を読むように命じられたりしました。また、解雇前の1年以上にわたって在宅で、ほぼフィードバックのないレポート提出などを命じられていました。
命じられたとおりレポート提出を続けてきたところ、面談があり、突然、即日解雇を言い渡されました。

会社はAさんに対し、具体的な解雇事由を示すことなく、突然解雇を言い渡しました。また、解雇通知書も解雇理由証明書も交付しませんでした。その後、Aさんは合同労組(ひとりでも加盟できる労働組合)に加盟し、解雇撤回等を求めて団体交渉を重ねました。団体交渉で会社から解雇理由についての説明を求めたものの、会社から納得のできる回答はありませんでした。そこで、2022年1月、Aさんは解雇無効とバックペイ(解雇が無効であれば支払われるべき賃金)の支払を求め、大阪地方裁判所に地位確認請求訴訟を提起しました。

2023年6月、裁判は和解で終わりました。会社は解雇の意思表示を撤回する、会社は労働者に対し解決金を支払う、労働契約の終了を労使双方確認するといった内容でした。解決金は、和解時点でのバックペイの額がベースでした。和解金額にのみ口外禁止条項がついていますが、事案や期間等からして、相当勝利的な和解を勝ち取ったと評価しています。

本件の特徴

Aさん(労働者)自身の努力

本件勝利和解の決め手は、いくつかありますが、解雇理由が抽象的であったこと、解雇後に加盟した組合が団交を重ね、会社がいう抽象的な「解雇事由」を引き出していたこと等が挙げられます。団交での会社側の発言や、団交で得た資料等は、その後の裁判でも活かされることがあります。

Aさんと当職は、団交での回答の矛盾、Aさんが録音していた上司との面談時のやりとりとの矛盾、抽象的な「解雇事由」の不合理性等、具体的に会社の主張に反論していきました。

Aさん(労働者)自身が、裁判が始まる前も、始まった後も、組合とともに事件と向き合い続けたからこその勝利でした。

解決金額以外には口外禁止条項なし

使用者側は、労働事件において和解する際、口外禁止条項を入れることもを求めてくることが多いです。

口外禁止条項とは、読んで字のごとしで、和解の内容や、事件の内容を第三者に言ったり書いたりしてはならないというものです。

※労働事件における口外禁止条項の不当性については、別の記事で書いています。

当職に依頼される方は、相対的にこの口外禁止条項は許さないという方が多いように思われます。

これは労働弁護士としては誇りに思います。

本件も、最終的には、「原告と被告は、本和解条項中第○項の金額にいては、官公庁からの照会その他これに類する正当な理由がない限り、第三者に対して口外しないことを約する。」と、解決金額以外には口外禁止条項なし、で和解が成立しています。

※そのため、この記事でも会社名や解雇事由等もっと具体的に記載しても和解調書には抵触しないのですが、代理人という立場上、抽象化して記載しています。

「不当」解雇だと思うことからスタートする

客観的合理性を欠き、社会通念上相当と認められなければ、解雇権の濫用として解雇は無効です。また、就業規則に解雇するに際しての手続条項が定められている場合は、これらの手続を踏まないで行われた解雇は無効とされる場合もあります。

しかし、解雇通知自体は、たとえ違法・不当なものであったとしても、使用者による一方的な意思表示のみですることができます。

本件の場合、解雇前の約1年の在宅勤務も極めて不当といえます(この時点ではAさんもまだ労働組合等に相談に行っていません。)。

もちろん、解雇の「無効」は異議申立てや闘いを経て勝ち取るものです。本件和解も、Aさんが解雇が「不当」だと思い、就労の意思を明らかにし、毅然と闘い続けたからこその勝利的和解だといえます。

 

弁護士中井雅人

不当解雇