【判決】法廷内での手錠腰縄国賠 大阪地判2019年5月27日 判例タイムズ1486号 2021.9月号

法廷内での手錠・腰縄が違憲違法として国家賠償を求め提訴していた事件について、2019年5月27日大阪地裁判決がありました。

同判決が、判例タイムズ1486号.230頁に掲載されました。

同判決は、結論では請求を棄却しましたが、理由中の判断において、

「現在の社会一般の受け取り方を基準とした場合、手錠等を施された被告人の姿は、罪人、有罪であるとの印象を与えるおそれがないとはいえないものであって、手錠等を施されること自体、通常人の感覚として極めて不名誉なものと感じることは、十分に理解されるところである。また、上記のような手錠等についての社会一般の受け取り方を基準とした場合、手錠等を施された姿を公衆の前にさらされた者は、自尊心を著しく傷つけられ、耐え難い屈辱感と精神的苦痛を受けることになることも想像に難くない。これらのことに加えて確定判決を経ていない被告人は無罪の推定を受ける地位にあることにもかんがみると、個人の尊厳と人格価値の尊重を宣言し、個人の容貌等に関する人格的利益を保障している憲法13条の趣旨に照らし、身柄拘束を受けている被告人は、上記のとおりみだりに容ぼうや姿態を撮影されない権利を有しているというにとどまらず、手錠等を施された姿をみだりに公衆にさらされないとの正当な利益ないし期待を有しており、かかる利益ないし期待についても人格的利益として法的な保護に値するものと解することが相当である。」

として、公衆から手錠等を施された姿を見られたくないという被告人の利益が法的に保護されることを認めました。

また、同判決は、

「以上のとおりであって,手錠等を施された姿を傍聴人に見られたくないとの被告人の利益ないし期待は,憲法13条の趣旨に照らして法的保護に値する人格的利益であって,裁判長が法廷警察権を行使するに当たっては可能な限り尊重されるべきであること,具体的な方法として,①法廷の被告人出入口の扉のすぐ外で手錠等の着脱を行うこととし,手錠等を施さない状態で被告人を入退廷させる方法,②法廷内において被告人出入口の扉付近に衝立等による遮へい措置を行い,その中で手錠等の着脱を行う方法,③法廷内で手錠等を解いた後に傍聴人を入廷させ,傍聴人を退廷させた後に手錠等を施す方法が考えられ,いずれかの方法を選択することにより適切な措置を講じることは可能であると認められることに加え,既に平成5年には最高裁判所事務総局刑事局と法務省矯正局との間において,戒具を施された姿を傍聴人の目に触れさせないようにするための方策について協議がされ,特に戒具を施された被告人の姿を傍聴人の目に触れさせることは避けるべきであるという事情が認められる場合の具体的な運用について協議が整い,最高裁刑事局長等書簡及び法務省矯正局長通知によって全国の裁判所及び矯正施設に周知されていたことにも照らすならば,少なくとも,本件刑事事件1及び2の公判期日が開かれた時点においては,法廷警察権を行使すべき立場にある裁判長は,被告人又は弁護人から手錠等を施された被告人の姿を傍聴人の目に触れさせないようにしてほしい旨の要請があった場合には,かかる被告人の要望に配慮し,身柄拘束についての責任を負う刑事施設と意見交換を行うなどして,手錠等の解錠及び施錠のタイミングや施錠及び解錠の場所をどうするかという点に関する判断を行うのに必要な情報を収集し,その結果を踏まえて弁護人と協議を行うなどして具体的な方法について検討し,具体的な手錠等解錠及び施錠のタイミングや場所について判断し,刑務官等に対して指示することが相当であったというべきである。」

として、被告人の人格的利益を保護するための具体的な方法を提示しています。

 

第1回口頭弁論期日 法廷での手錠腰縄は違憲・違法 国家賠償請求

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提訴 法廷での手錠腰縄は違憲・違法 国家賠償請求

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